垂直梯子と健康診断

一般

どの会社もそうだと思うのだが1年に1回健康診断が実施される。社員は当然強制で受けさせられる。

 

子供の頃から腕力はない。なかでも握力は女性レベルにない。あるとき右腕の筋肉を痛めて手の平に力が入らなくなった。結果とうとう1年に1回の会社の健康診断で引っかかってしまった。右手の握力が25キロという最低数値を下回ったのである。いわば赤点をもらっってしまった。

 

属する職場は設計といえど仕事の性格上現場に行く。船にも乗る。健康診断に引っかかったことで現場に出入り禁止となった。正直健康診断のときは軽く考えていた。深刻なことはないと思っていた。内臓に影が見つかった訳ではない。心臓に異常があった訳でもない。握力が低くても大したことないじゃないかと軽く考えていた。それがいきなり現場出入り禁止である。現場に行けないということは海上運転に参加出来ないことを意味する。当時PCTC(自動車運搬船)の機関部の設計取り纏めを任されていたので状況は深刻だった。

 

軽く考えていた握力は現場の工作部の強い要望で健康診断の項目として重要視されていた。

 

理由は船のあちこちに点在する垂直梯子=VERTICAL LADDERである。梯子を上るとき手で掴んで上る。特に垂直梯子は身体の上半身を手で支える割合が大きくなる。握力がないと梯子を伝って上に上ることが出来なくなる。そんな経験から船の現場で握力の必要性は大切で無視出来ないという訳だった。

 

最近ではSNSで寄港する直前の船に乗り込むパイロットが舷側に垂らされた垂直梯子を上って行く姿を見かけることがある。命がけの仕事である。やはり握力というのはこの分野で造船も含め船に乗船する乗組員や作業者には必要な身体能力なのだ。

 

杓子定規な健康診断の担当者だったが数値が正常値になれば現場出動を即許可するという言質をいただいた。職場に迷惑をかける訳にはいかない。日々の握力増強の習慣を取り入れ少し間を置いて現場復帰許可された。

 

梯子を上るとき握力が必要である。普段使っていない筋肉やら関節やら骨やらを鍛える、あるいは鍛えるとまではいかなくとも刺激する。そういったことをあえて気にかけて取り入れることも大切である。

 

思わぬ出来事で得た貴重な経験。

 

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