2021年1月12日夕方首都圏を含む東京電力管轄内の電力需要は逼迫している。
東京電力パワーグリッドのHPの「でんき予報」によると「需要ピーク時」と「使用率ピーク時」とは共に95%で「厳しい」という指標になっている。
(ちなみに、93%未満が「安定的」【緑】、93%以上95%未満が「やや厳しい」【黄色】、95%以上が「厳しい」【橙】、97%レベルが「非常に厳しい」【赤】と色分けしている。12 日夕方現在は橙色)
https://www.tepco.co.jp/forecast/
寒波の影響による寒さで暖房による電力需要が高くなっているのが原因らしい。電力需要の逼迫という問題は夏場のエアコン需要が高くなる時期特有の問題という印象だった。しかし、最近は事情が異なるらしい。夏場の需要は変わらずとも太陽電池の普及による供給の拡大が寄与しているとのことだ。夏場は太陽電池による電力供給は期待できるとしても冬はそうはいかない。地球は地軸が23.4°傾いており冬は太陽の高度が低く太陽電池パネルが受ける太陽エネルギーがどうしても低くなる。その分電力供給量が下がり需要に追いつかなくなる傾向が出てくるというのだ。
再来月の3月で東北大震災から丸10年経つ。この10年の間に原発による電力供給はわずかしか無くなった。JAERO/日本原子力文化財団のHPによると2020年11月24日現在では稼働中で定期点検などで停止中の6基を除くと九州電力の玄海原子力発電所の3号基と4号基、同じく九州電力の川内原子力発電所の1号基の3基のみである。
http://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/zumen/4-1-3.pdf
火力発電所はLNG焚き発電所はともかく石炭火力は今後縮小や廃止の方向に行かざるを得ない。何故なら現政権である菅義偉総理が昨年の10月26日の所信表明演説で「我が国は、ニ〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちニ〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。」と表明したからだ。
今から30年程度で実現出来るのだろうか。そのコンセプトとしての未来型電力の供給形態はどんな選択肢があるのだろうか。
人口減少とエネルギー効率化が電力需要が減って行く要因になると仮定しても経済の成長率を考慮すると単純に年々の電力需要が単純に減って行くとは考え難い。むしろ、ガス需要も含め総合的には増えていくと考えた方が自然である。そんな中でクリーンエネルギーでこれまでの電力需要、これから増加する電力需要をまかなえるのか。地球上の日本という立地条件から言って難しいと言わざるを得ない。
クリーンエネルギーとしてはやはり太陽電池と風力発電が思い浮かぶ。しかし、どちらも短所がある。太陽電池については冬場の供給が上述の通り期待出来ないこと。風力発電においても同様で四季を通じて安定的な供給は期待出来ない。加えてベース電力としての扱いも考えにくい。太陽電池では曇りや雨の天気の際と夜に、風力発電では無風の時に、いずれも電力供給が出来ないか出来ても十分でないからである。
こうなると原子力発電所の再稼働というのが現実的と考える。廃炉に向けて動いている福島第一原子力発電所の報道などから原子力発電所稼働による核廃棄物の処理が問題となることはデメリットの一つである。地震などの災害に対する対策についても地元住民が納得出来るほどのものでない場合もある。(これなどはフクシマの原発事故が起きる前まで「原発は絶対安全」と説明していた電力供給側の責任が大きい。世の中に絶対ということは有り得ないのだから。)
しかし、発電所を一から計画し造るには5年や10年はかかることを考えるとベース電力を底上げする観点から今現存する原子力発電所の比較的新しい設備や施設を再稼働させることが現実的ではないだろうか。
ここで原子力発電所といっても2つの型式がある。沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor)と加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor)である。フクシマで事故を起こしたのは沸騰水型である。安全性を考慮して沸騰水型原子炉を採用した発電所の再稼働は事実上困難だ。再稼働が可能とすれば加圧水型原子炉を採用した原子力発電所になる。とすれば、関西電力、九州電力、四国電力、北海道電力などになるのであろうか。いずれにしてもここ5〜10年の短期的観点に限っては東北大震災より今や原子力発電所再稼働という可能な限り避けてきた問題をそろそろ真剣に日本国民全体で考える時期に来ている。
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