ディーゼルエンジンのねじり振動

船舶

商船は搭載する主機関の種類によっておおまかに2つに分類出来る。ディーゼル船とタービン船である。ディーゼル船はおよそほとんどが2サイクルのディーゼルエンジンを主機関として搭載している。タービン船は蒸気タービンを主機関として搭載している。

 

ちなみに、商船に対し海上自衛隊の艦艇はほぼガスタービンを主機関として採用されており燃料も軽油に相当する蒸留油が使われる。

 

商船においてタービン船は現代ではほぼLNGを燃料として使用する液化天然ガス運搬船/LNGCがほとんどである。

 

ディーゼルエンジンを主機関として搭載している商船は2サイクルのディーゼルエンジンと4サイクルのディーゼルエンジンに分かれる。2サイクルのディーゼルエンジンが大半を占める。

 

2サイクルのディーゼルエンジンの特徴はストローク/Strokeが長く回転数が低いことである。商船であるが故に燃費が良い(低い)ことが重要なので低回転かつロングストロークであればあるほど良い。実際はプロペラ性能の関係で低回転といっても限界はあるが。

 

ちなみに、F1のレーシングカーはこの2サイクルのディーゼルエンジンとは真逆の設定となる。すなわち、ストロークは可能な限り短くし回転数を可能な限り高く設定する。そうすることでトルクを稼ぐ一方でエンジンそのものの重量を軽く出来る。反面おそらく燃費は最悪になるだろう。

 

 

燃費を良くして回転数を低く設定しピストンのストロークを長くすると問題が大きくなるのがねじり振動である。ディーゼルエンジンはピストンの上下運動をクランクによってプロペラに直結する軸に回転トルクを伝える。そのためトルク変動が起きる。ディーゼルエンジン特有の問題でタービンでは蒸気タービンでもガスタービンでも問題にはならない。(ねじり振動そのものはプロペラが元になって起振されるねじり振動はあるが微力で問題にならない。)このトルク変動がねじり振動となって軸系に危険をもたらす。ディーゼルエンジンの自由端(船首側の端)からプロペラまでの推進軸の慣性モーメントによって軸系固有の振動数が決まる。この固有振動数が共振点となり共振点に沿った回転数ではねじり振動による変動トルクが非常に高くなる。時には回転物の許容応力を越えて破壊に至る恐れもある。このような

場合はその共振点を中心に前後5rpmの10rpmの回転域を危険回転数としてバードレンジと呼び運転を回避する。

 

トルク変動を抑えることが軸の構造上ディーゼルエンジンでは不可能である。このため起振力の大きい起振周波数のある共振点での運転を回避することで運用が成り立っている。

 

陸上の乗用車では速度メーターを見ながらアクセルを踏んだり緩めたりして速度を制御する。船上ではエンジンの回転数で制御する。低速域ではDEAD SLOW、SLOW、HALF、FULL、NAVIGATION FULLなどとエンジンテレグラフを設定し各回転数を予め決める。従って、その各回転数の設定に際してはねじり振動の影響を可能な限り受けない回転数領域に設定しなければならない。逆に設計段階で要すればホイールの慣性モーメントを付加したりして共振点を変えることもする。船種によって全回転数を使用する必要がある場合はねじり振動ダンパーを装備して変動トルクそのものを抑える対策を講じる。

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