就職して赴任した長崎の造船所では造船分野だけでなくプラント関連のタービンやボイラ工場、プロペラ工場、など多岐に渡る製品群に関わっていた。中には珍しいものもあった。その一つがタイヤ機械である。車のタイヤが主であるがそのタイヤを製造する機械を作っていた。一般の乗用車は購入する人も乗る人も多い。その関連で車パーツを売る販売店やガソリンスタンドでタイヤを売っているから買う人も多いだろう。会社でそのタイヤ機械部門の設計に配属となった同期がいたのでいろんな話を聞けた。曰く、ゴムにどれだけの硫黄を加えるかでタイヤの性能が変化する。タイヤメーカはその加硫の塩梅、匙加減を血眼になって研究している。(それは当時の話)といったタイヤメーカの話など。
レストランの格付けで有名なミシュランはフランスのタイヤメーカである。そのタイヤメーカが何故レストランガイドを出版するのか。きっかけはタイヤを出来るだけ消費してもらうことを意図して始めたとのことだった。タイヤは消費材である。旅行などで車を使い走らせれば走るほどタイヤは消耗する。使ってもらえれば買ってもらえる。そんな発想から始まったガイド本だったそうだ。エンドメーカではないタイヤメーカが一般の消費者に働きかけるその深謀遠慮。日本ではちょっと考えつかないのではないだろうか。
タイヤをめぐるビジネスでは石炭の炭鉱の話が印象に残っている。中国などでよくある石炭の露天掘り。広大な敷地の中を一般道では考えられない様な巨大なダンプカーが行き来する。その車輪に使われているタイヤは数で売られるわけではないそうだ。1ついくらではなく、その露天掘りで消費するタイヤが○年間使われる分という単位で契約するらしい。つまり量だけではなく寿命が関与するビジネス。「だから、想定したより寿命が長ければメッチャ儲かるねん。」とその同期の友人は関西弁で説明した。へぇえ!業界毎の契約形態があってそれは一般の常識から見事に外れ思いも寄らないものだと知らない世界を垣間見た気がした。
世界中で自動車は使われている。走っている。タイヤも当然使われている。しかし地域によってその品質は同じではないらしい。特にアフリカは悪路が多くスピードを出せないので比較的低い品質のタイヤがアフリカ方面に流れるとも聞いた。(これも当時の話。アフリカは開発が進んでいるので舗装された道も整備されていくだろうし変わっていくだろう。)
設計に携わるものが設計だけを考えれば良いのではなくその使い方、使われ方をある程度知っておく必要がある。そんな実例をタイヤ機械を通じてその同期の友人を通じて学んだ。
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